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勇者の献上品である聖女は、魔王に奪われその身に愛をそそがれる
第57章 再会①
 ソルの姿は、離れの庭にあった。
 目の前で咲き乱れる、真っ赤な花に触れる。

 その時、彼を呼ぶ声が響き渡った。

「魔王様、やはりここにおられましたか」

「アンジェラか。どうした?」

「城の者たちが探しております。もうそろそろお戻り頂けると……」

「……ああ、もうそんなに時間が経ったのか」

 少しだけのつもりだったのに、と心の中で呟く。

 アンジェラに指摘され、ここに来てからかなりの時間が経っていたことに気づかされる。

 時間の感覚がないほど、ここで物思いに耽っていたらしい。

 そんな自分の言葉に対してか、背後のアンジェラが深いため息をついた。そして横に立つと、彼が触れているピアチェの花に視線を向ける。

 花の向こうに思い浮かべた者へ、愛情を注ぐように。

「大丈夫ですよ、魔王様。フィーネ様は必ず戻ってきます……必ず」

「……ああ」

 だがアンジェラの慰めも、ソルの心の奥には届かない。

 再びため息をつくと、もう一度城に戻るよう促し、アンジェラは庭から姿を消した。

 一人残されたソルはピアチェの花を見つめながら、今日も愛する人の名を呼ぶ。

「……フィーネ」
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