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勇者の献上品である聖女は、魔王に奪われその身に愛をそそがれる
第2章 魔王②
 この世界には大昔から、人間と魔族、二つの種族が存在している。

 魔族は、人間と似つつも違った容姿と自然を操る力を持っており、恐怖した人間たちは、魔に仕える存在――魔族と呼んでいた。

 千年程前、突如として起こった天変地異によって、人は数を減らし、世界は滅亡へと進む。

 それを救ったのが、今、この世界で崇められている守護女神――ピアチェ。
 
 世界を救った後、女神ピアチェは人間の住む地に祝福を与え、自身を祭る神殿を作らせ、神官たちに《女神の技》と呼ばれる神秘の力を分け与えた。

 ピアチェの力満ちる神殿は《聖地》と呼ばれ、今もなお、女性だけで構成された神官たちによって守り続けられている。

 人間たちは、世界に起こった天変地異は魔族たちが引き起こしたものだと訴え、女神に魔族の根絶を願った。

 しかし女神は願いを聞き入れず、代わりに領土を、人間の国サテアナと魔族の国ディザニアの二つに分け、互いに干渉し合うなと神託を下す。領土が分かたれ、種族間の因縁に決着がついた、かと思われた。

「世界に害をなす魔族を排せよ」

 ――二十年前、女神ピアチェが人間に新たな神託を下すまでは。
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