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勇者の献上品である聖女は、魔王に奪われその身に愛をそそがれる
第15章 自由
「あなた様は道具ではありません。ですから、理不尽な命令に従う必要などないのですよ。嫌なら嫌だとおっしゃって下さい。もし魔王様が無理やり迫るようであれば、このアンジェラをお呼びください。すぐさま駆けつけますから!」

「あ、はい……」

 後半にかけて、アンジェラの口調が強くなった。魔王がフィーネを無理やり抱いたことを思い出し、怒りが再熱したのかもしれない。

 情事の最中にアンジェラが飛び込んで来て、魔王を叱咤する姿を想像すると、恥ずかしさで顔が赤くなった。

(初めて役目を果たさなくても良いと言われた。嫌だと言っていいのだと……)

 この国では、フィーネにとっての当たり前だったことが、当たり前じゃないと言われる。

(あの方に力を与えなくてよいなら、私は一体何をすれば……)

 聖地に閉じ込められ、道具として役目を果たせと言われ続けたフィーネには、自由は言葉でしか知らない存在で、今この手にあるのだと言われても、どう扱ってよいのか分からない代物だった。
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