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華夏の煌き~麗しき男装の乙女軍師~
第43章 43 事故
 橋の上で転びかけた絹枝を、さっと慶明は支える。

「あ、あなた」
「危ないな」
「すみません。ちょっとめまいがして……」
「めまい? 今だけか?」
「それが、ここの所毎日……」
「どうして早く言わないんだ」
「軽いものですし、もう年なのかと」

 近眼な絹枝は目をしばしば瞬きさせながら慶明に答える。慶明は彼女の手を引き、近くの東屋で休ませ脈を測る。

「今日はお早いんですね」
「ああ、今日は医局の整頓の日でな。私はいてもあまり役に立たないので帰ってきたのだ」
「役に立たないなんて」
 
ふっと笑む絹枝の目じりに細かい皴ができている。情熱的でもなく、喧嘩をするわけでもなく穏やかな夫婦関係だが、慶明は長く時間を共有してきたのだと、彼女の皴を見て実感する。そう思って絹枝の髪を見るとちらほら白いものも混じっていた。

「ともに白髪頭になるまで、か」
「何か?」
「いや。なんだか睡眠不足になっているようだな。身体の中を気がちゃんと巡っていない」
「そう?」
「病気はないが、どうもおかしい。何か心配事でもあるのか?」
「いえ、特に……」
「ご婦人特有の症状でもない。まあしかしこの太鼓橋は普通の平坦な橋に変えさせよう」
「あら、いいのに」
「いや、もっと早くにしておけばよかった。君は目が悪いからね。落ちるといけない」
「すみません」
「夕げまで休むといい」
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