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華夏の煌き~麗しき男装の乙女軍師~
第76章 76 陰謀の中心
 屋敷に戻っても気を抜かず、顔をしかめたまま使用人に茶を一杯入れて持ってくるようにと告げて部屋に入る。夜はもう更けていて妻の絹枝も、息子の貴晶も眠っているようだった。茶を運ばせ、一人きりになり一口茶を飲んで慶明はやっとひとここちつく。

「ふうっ。一つ片付いた……」

 蘭加の死によって、王太子、曹隆明の命が狙われることはもうないだろう。死の瞬間まで蘭加は、自分が慶明のターゲットになっていたことに気づかなかった。慶明は時間をかけてじっくりと、蘭加に少量ずつ、中毒症状を引き起こさせるための毒を与えておいた。一定の量が体内に蓄積されたとき、対象の食物によって中毒を起こす。
医局長の陸慶明にしかできないことだった。たとえ解剖されても、ショック症状なので毒は検出されない。

 次の依頼者は申陽菜だ。同じ手はすぐには使えないだろうと、別の方法を考えながら茶を啜る。今の慶明はもう履物を脱いでリラックスすることはなくなっていた。
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