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華夏の煌き~麗しき男装の乙女軍師~
第90章 90 交換
「陸殿……」
「今、聞いて。西国に帰られるのですか」
「ええ。それしか二人を救うことはできないので」
「残念だ」
一番事情を知っている慶明も、何の手立てもなかった。
「もう、ここには戻れないでしょうね。徳樹をしばらく陸家で預かっていただけませんか?」
「もちろん」
「よかった……」
話し合えることは何もなかったが、京湖は西国にいる、自分を蛇のようにしつこく手に入れようとする男を思い出し身震いする。
「ほかに私にできることが何かあれば」
「ありがとうございます、もう、特に……」
「そうですか……」
頭を下げて去ろうとする慶明を、京湖は引き留めた。
「あの一つだけお願いが。ほしいものがあるのです」
「なんでも」
「毒を」
「毒?」
「お願いです」
死をも覚悟している京湖に怖いものは何もなかった。
「わかりました。明日中に用意しましょう」
慶明も毒を何に使うかなど詮索はしなかった。ただ彼女の要望通りに、すぐさま調合し渡すだけだ。
「さあ、食事の支度をしないと」
明後日にはもうこの家を出る。それまで出来るだけ日常生活を味わっていたかった。
「今、聞いて。西国に帰られるのですか」
「ええ。それしか二人を救うことはできないので」
「残念だ」
一番事情を知っている慶明も、何の手立てもなかった。
「もう、ここには戻れないでしょうね。徳樹をしばらく陸家で預かっていただけませんか?」
「もちろん」
「よかった……」
話し合えることは何もなかったが、京湖は西国にいる、自分を蛇のようにしつこく手に入れようとする男を思い出し身震いする。
「ほかに私にできることが何かあれば」
「ありがとうございます、もう、特に……」
「そうですか……」
頭を下げて去ろうとする慶明を、京湖は引き留めた。
「あの一つだけお願いが。ほしいものがあるのです」
「なんでも」
「毒を」
「毒?」
「お願いです」
死をも覚悟している京湖に怖いものは何もなかった。
「わかりました。明日中に用意しましょう」
慶明も毒を何に使うかなど詮索はしなかった。ただ彼女の要望通りに、すぐさま調合し渡すだけだ。
「さあ、食事の支度をしないと」
明後日にはもうこの家を出る。それまで出来るだけ日常生活を味わっていたかった。