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華夏の煌き~麗しき男装の乙女軍師~
第93章 93 父との別れ
 京樹も同じだった。彼は西国人であるが、華夏国育ちのおかげで、身分に囚われることはない。彰浩も、華夏国に近いところに住み漢名をも持ち、20年以上暮らしてきたのに、やはり中身は西国人なのだ。

「もう二度と京湖には会えないだろうが、せめて同じ国土を踏んでいたいのだ」

 控えめで静かに京湖を愛してきた彰浩の願いを、星羅も京樹も反対する気はなかった。

「寂しいわ……」
「お前たちがまだ幼ければ、一緒に西国へ連れていくのだが。二人とも立派になった」

 自立した二人を彰浩はまぶしく見つめる。彰浩にとって、西国の花と呼ばれたラージハニこと京湖と過ごした日々は、子供たちを見れば夢でも幻でもなかったのだと実感する。しかし西国に帰って、自分の朽ち果てた陶房で今までの生活を夢のような日々だったと想像しながら過ごすのだろう。いい夢を見たと思いながら、静かに陶器を作る日々を彰浩はそんなに悪くないと思っている。

「手紙をかいてね」
「ああ、わかったよ」

 最後の晩餐は、星羅がありったけのスパイスを使って咖哩を作った。彰浩も京樹も京湖の味がすると喜んだ。星羅もそう思ったが、もう二度と咖哩は作らないだろうと思っていた。

 京樹も星羅も感傷的になりたくなくて仕事に精を出す。それでも京樹は西の空の星を見、星羅も西の地に思いを馳せる。
実際に感傷に浸っている暇はなかった、華夏国はますます冷え込んでいき、作物は枯れ始め、家畜は減少していった。北部からは南下してくる難民が増え、豊かで温かい南部では食料の買い占めが始まっている。国民を落ち着かせ、国力を保つために2人とも泣いていられなかった。 
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