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Q 強制受精で生まれる私
第10章 4.0度目
 あと少しでこのもどかしかから解放される。そんな風に期待させておきながら、先生はそれを裏切るかのように指をアソコから引き抜いてしまう。私と同じ思いを抱いていたのか、膣がイク用意ができていたのに肩透かしをくらい、一人寂しくひくついているのを感じ取る。

 腕や口で抵抗の意志は示していたものの、どちらも形だけの嘘であり、本心はこの勢いに任せて絶頂を迎えたいという欲求で満たされていた。当然この男のことだ。いつもみたいにこのまま無慈悲にイカされるとばかり思っていたし、そのつもりでいた。なのにこの仕打ちは一体何だというのか。


「あ…うぁ…どう、して…」

「これからが本番だというのに、こんな所で体力消耗してどうするんですか? そんなんじゃこの先のハードな治療に耐えられませんよ、全く…そんなことより見てくださいよ、これ。」

 イキそびれた私をよそに、先生は目の前に右手を持ってきて、見せびらかすようにゆっくりと指を開いていく。手首まで滴り伝う私の愛液が、指の間で幾重もの糸になり、きめ細やかな蜘蛛の巣を作りだす。限界まで開かれても決して切れることが無いその透き通った糸達が、私が淫乱な女だと証明しているかのようで、焼け落ちそうな程に頭が恥辱で沸騰していく。

「この頸管粘液の伸びやすさ。分泌量の多さ。無色透明な色…排卵前後であることは間違いありません。記憶を無くされていてもさすがに分かりますよね? 今の浜園さんは精子が欲しくて仕方ない。妊娠したくてたまらない状態にあるということです。」

「そんな…嘘よ。こんなのでたらめだわ!! 根拠のない伝承で私を騙そうとするのは止めて!!」

「私は医者ですよ? それも婦人科の。今までに何人もの女性の体をこの目で見てきたんです。間違いありませんよ。それに科学的な根拠だって当然ありますよ。あるから今日こうして来たんじゃないですか。」

 先生はそう言うとパンツのポケットに手を入れ、一本のスティック状の何かを取り出して私に見せつける。体温計にしては大きすぎる形状をした白一色のプラスチック棒。その窪みにマゼンタ色の縦線が二本引かれている。僅かながら左の線が右の線よりも色が濃く出ているように見える。
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