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Q 強制受精で生まれる私
第12章 4.9度目
「そんな危険な物だったなんて…知らなかったんです。私はただ、何かに役に立つかもって思って…」

「それで許可もなく盗んだ、と。とても褒められた理由ではないですね。第一、正規な生理用品であるタンポンを危険物呼ばわりなんてメーカーに極めて失礼です。正しい使用法を守れば、これ程優れた物はありませんよ。」

「ぬ、盗んでなんか!! そんなんじゃありません!! 私は自分の身を守ろうとっ!!」

 黙れと言わんばかりに先生は机に手の平を大きく打ち付ける。バァンという甲高い衝突音が決して広くはない室内に響き渡り、私の反論を封殺する。「最後まで話を聞いて下さいよ…」と苛立ちが露になったぼやきを漏らして、先生は説明を続ける。

「タンポンだけに限らず生理用品の長時間の装着は、毒素による急性疾患のリスクを高めます。清潔でない手や指で直接触れてしまえばそれだけでも罹患、膣を清潔にしていないのなら尚更です。本来であれば一日に三回以上も交換する代物ですよ? 変な形で中に入っていましたし、おそらく装着に失敗したから不衛生な指で直接押し込んだのだろうと思うのですが、いかがです?」

 不衛生な体。指で直接。長時間の装着…身に覚えがありすぎて何も言い返すことができない。仮にできたとしても、今の先生の前ではそれをするのは無理に等しい。そういえば気が動転していた私に、先生は何度も体を清潔にするように忠告していたのを今更になって思い出す。

「大方殺精や避妊といったところが理由でしょうが、如何に浜園さんが危険な事をしていたかご理解頂けましたか? 排卵の後ですから経血処理のために着けるならいざ知らず、そんな医学的根拠も無いふざけた理由で使っていい物ではないんですよ。過去には重症化して脚を切り落としたり、死亡したという症例だってあります。浜園さんも後少し治療が遅ければ、もれなくその方々の一員になっていたのですよ。」

 徐々に声のトーンが荒くなってくる先生に、私は伏し目がちでただ黙って聞いていることしかできない。そんな私に最後のとどめを刺さんと言わんばかりに、先生は私の頭を鷲掴みして無理やり視線を合わせてくる。その目は決して私の行いを許さないという、激しい怒りに満ちている。


「もう一度言います。あと一歩で死ぬところだったんですよ? 貴方。」

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