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氷の戦乙女は人たらし公爵に溺愛される〜甘く淫らに溶かされて〜
第4章 フェガリ
 父の家で話をしていると意気投合し、お互いに何人か知らないまま恋に落ちた。愛する人が敵国の民だと知っても、愛してしまったら関係ない。
 ふたりは出会った森で逢瀬を繰り返したが、母には政略結婚をしなければならない相手いる。父はそのことを知り、母にフェガリで暮らすように言うが。家族のために政略結婚を受け入れた母は、時折こうして逢瀬することを望んだ。その頃、母のお腹の中には既にラウルがいたが、婚約者との子供ということにするつもりだった。

 だが、ブロンドである母と婚約者の間に産まれたとされるラウルの髪はミルクティー色だった。前々から母の不貞疑っていた婚約者は、母を通報した。不貞取締専門の自警団は母をつけ、森の中で逢瀬する両親を捕えた。ふたりは磔にされ、ラウルは顔に焼印を押される寸前、父方の叔父に助けられた。だが本当にギリギリだったため、顔は逃れたものの、右の鎖骨下に押されてしまった。

「顔じゃなくてここだったのが救いだと思ってるよ」
 そう言ってラウルは焼印を見せた。三日月の焼印に、カミリアは顔をしかめる。シャムスでは三日月は不完全なもの、刃物にも見えることから危険分子という意味もある。そんなものを罪のない赤子に焼き付けるのは、どう考えてもおかしい。
「こんなの、おかしい……」
「そうだね。だからこそ、僕とサウラで手を組んで、シャムスとフェガリを変えていくんだよ」
 ラウルの声音は優しいものの、力強さが感じられた。それぞれの国の風習に苦しんだふたりだからこそ、両国をいい方向へ変えていってくれる。カミリアはそう確信していた。

「このことを知ってる人は、叔父様以外にいないの? そういえば、叔父様にはまだ会ってないのだけど……」
「叔父はこの国の騎士団長だったんだけど、ずっと前に病死してしまったんだ」
「知らなかったとはいえ、ごめんなさい……」
「いいんだ、気にしないで。叔父が亡くなった時は悲しかったけど、今は賑やかに暮らしてるから楽しいよ。それに、叔父が病死でよかったって、心の底から思ってるよ」
「どういうこと?」
 不謹慎にも聞こえる発言に、カミリアはまじまじとラウルを見つめる。カミリアの視線に、ラウルは困ったように笑う。
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