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氷の戦乙女は人たらし公爵に溺愛される〜甘く淫らに溶かされて〜
第4章 フェガリ
 男性貴族達のこともとことん褒めちぎり、彼らの気を良くする言葉を並べ立てた。そのため、ラウルに護衛された貴族のほとんどが、彼の顔を覚えている。
「この人たらし」
「酷い言い様だね。僕は真面目に仕事してただけなのに」
 ラウルはふてくされるが、真面目に仕事をしていたら、女性達が宿舎などに押しかけてくることはない。護衛任務はあくまでも護衛対象を守る仕事であって、褒めちぎることは仕事ではないのだから。

「護衛任務の後にも行ったけど、私達は彼らを護衛していればいいの」
「厳しいなぁ……」
 そう言ってラウルは苦笑する。きっと反省はしていないだろう。
(困った団長だわ……)
 カミリアはうんざりしてため息をつく。

「ねぇ、ラウル。聞きたいことがあるんだけど、いい?」
「なんでも聞いて」
「養生中、私に色々教えてくれたでしょう? 今までどんな風に生きてきたかとか、シャムスに復讐を考えていることとか。どうして私に話そうと思ったの?」
 ラウルは一瞬目を丸くすると、慈愛に満ちた優しい笑みを浮かべる。笑っているはずなのに、どこか泣きそうにも見えて、胸が締め付けられる。

「好きな女性には、自分のことを知ってもらいたいんだ。他に理由なんてないよ」
 返答に困っていると、ラウルは立ち上がって伸びをした。
「サボれるのはこれが限度かな。そろそろ公務に戻らなくちゃ。そうそう、明日はドレスが届くはずだよ。楽しみだね」
 ラウルは一方的に言うと、屋敷の中に戻っていった。
 自分が何も言わないことによって、ラウルを傷つけてしまった。そんな気がしてならないが、どう答えればよかったのか、見当もつかない。

「私も、戻らないと……」
 カミリアも屋敷に戻り、勉学に励むことにした。
 誰もいなくなった中庭では、サンダーソニアがそよ風に揺れていた。
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