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氷の戦乙女は人たらし公爵に溺愛される〜甘く淫らに溶かされて〜
第6章 6章 光と影
「ソニア、このワイン、とても呑みやすくて美味しいの。呑んでみて」
 リュゼに勧められ、ワイングラスを傾ける。酒に弱いカミリアは、文字通り傾けるだけ。それでも押し寄せてくるアルコールの匂いに、目眩を覚える。
 強い酒を呑んでいる者がいるのか、部屋の中にアルコールが充満しているような気がする。

(どうしよう、気持ち悪くなってきた……)
 アルコールにあてられ、火照った頬に触れる。すると、右頬に冷たい手が触れた。悲鳴をこらえてそちらを見ると、リュゼが心配そうにカミリアの顔を覗き込んでいる。
「ソニア、顔赤いよ? 大丈夫?」
「ちょっと、アルコールにやられちゃったみたい。大丈夫よ」
 ヒソヒソ声で話すと、カミリアは水を飲んだ。少しでも良くなればと思ったが、良くなるどころか更に熱くなる。

「ちょっと外に行かない? お父様、ソニアがお酒にやられちゃったみたいだから、外の空気を吸わせに行ってもいいかしら?」
「あぁ、私は構わんが……」
 フローレス公爵は、ラウルをチラリと見る。ラウルはカミリアの顔を覗き込んだ。
「辛そうだね。リュゼになら任せてもいいかな。お願いできる?」
「はい」
 リュゼが返事をすると、ラウルは大きく頷いた。カミリアはリュゼの肩を借りて立ち上がる。

「ごめんね、リュゼ……」
 廊下に出ると、カミリアはリュゼに頭を下げる。リュゼはカミリアがいる晩餐会を楽しみにしてくれていた。それなのに、勧めてくれたワインや料理をあまり口にできなかっただけでなく、こうして迷惑をかけてしまい、いたたまれない気持ちでいっぱいになる。

「いいの、気にしないで。近くでキツイお酒を呑んでる人がいたから、仕方ないわ」
 リュゼの優しさが心に沁みる。本当にいい友達ができたと、心の底から思う。だが、交友パーティが終われば、自分は騎士に戻る。そうなったら彼女と会うこともなくなるだろう。罪悪感を寂しさが押し寄せる。
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