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Tears【涙】~神様のくれた赤ん坊~
第5章 ♠RoundⅢ(淫夢)♠ 
 結局、子どもには恵まれなかったが、夫のこの癖は十二年間、ついに直らなかった。最近では、紗英子ももう言うだけ無駄だと思っている。いつか義母―直輝の母に訊ねたら、彼の父親にも、そういう習慣があったという。
―私も子どもの教育に悪いと思ったから、止めてちょうだいって何度も頼んだんだけどねぇ。結局、直らなかったのよ。
 義母は笑いながら言った。その言葉は直輝を咎めているようにも聞こえなくもないが、穿った見方をすれば、自分も諦めたのだから、紗英子にも諦めて見て見ないふりをしろと言っているようにも取れる。
 直輝は上に姉、下に弟がいる。三人兄弟の真ん中だが、初めての男の子でもあった。中二のときから直輝と交際していたので、もちろん、直輝の母淳子には紗英子自身が中学生の頃から面識がある。さっぱりとした気性で嫁いびりとかいう言葉などとは無縁の人ではあるが、何しろ長男の直輝を溺愛している。
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