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Tears【涙】~神様のくれた赤ん坊~
第6章 ♠RoundⅣ(踏み出した瞬間)♠
 戸惑いを憶えながらも、紗英子は特に何も言わなかった。今ここで、有喜菜に否と言われたら、困るのは紗英子だったからだ。
「来週、一度、S市のクリニックに行くことになってるの。できれば、あなたも都合を合わせて行って欲しいわ。こうと決めたら、早いほうが良いものね。多分、そのときにひととおり健康状態のチェックとかもすると思うの。もちろん、私も卵子の状態を調べるわ」
 妊娠できるかどうか、妊娠しても継続することができるか。そういった面に関して細部に渡って調べることになるだろう。
「判った。日にちが決まったら、連絡して。その日に合わせて休みを取るから」
 有喜菜の口調は極めて事務的だった。その表情も淡々としていて、彼女が代理出産を引き受けたことを後悔しているのかどうかまでは判らない。
「それじゃあ、風邪なんか引かないように気をつけて」
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