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Tears【涙】~神様のくれた赤ん坊~
第6章 ♠RoundⅣ(踏み出した瞬間)♠
別れ際、紗英子は有喜菜に微笑みかけた。もちろん、その言葉は有喜菜本人のために言ったわけではなく、いずれは紗英子と直輝の大切な赤ちゃんをその身に宿すことになる女に対して言ったのだ。
紗英子の気持ちが伝わったのかどうか、有喜菜は曖昧な笑みを浮かべただけで何も言わずに去っていった。
そのときの有喜菜の表情は長らく紗英子の脳裏から消えることはなかった。何故だろう、期待どおりに有喜菜が代理母となることを引き受けたというのに、紗英子は心が弾まなかった。
―直輝の子どもを生むわ。
きっぱりと宣言した有喜菜の言葉の裏には、何か彼女の強い意思のようなものが隠されているように思えてならなかった。もしかしたら、有喜菜はこう言いたかったのではないか。
―あなたの子どもではなく、直輝の子どもを生むわ。
と。
紗英子の気持ちが伝わったのかどうか、有喜菜は曖昧な笑みを浮かべただけで何も言わずに去っていった。
そのときの有喜菜の表情は長らく紗英子の脳裏から消えることはなかった。何故だろう、期待どおりに有喜菜が代理母となることを引き受けたというのに、紗英子は心が弾まなかった。
―直輝の子どもを生むわ。
きっぱりと宣言した有喜菜の言葉の裏には、何か彼女の強い意思のようなものが隠されているように思えてならなかった。もしかしたら、有喜菜はこう言いたかったのではないか。
―あなたの子どもではなく、直輝の子どもを生むわ。
と。