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Tears【涙】~神様のくれた赤ん坊~
第6章 ♠RoundⅣ(踏み出した瞬間)♠
 直輝の持つカップから白い湯気がたちのぼっている。湯気を通して夫の顔を時折、ちらりと見ながら、紗英子は改めて直輝の整いすぎるほど整った顔に見惚れていた。
 私はこんなにも直君が好き。
 泣きたいような気持ちになってくる。
 一時は離婚しかないのかと思いつめたほどだったのに、やはり、昨夜のセックスが二人の距離を縮めてくれたのだろうか。だとすれば、直輝の考えはあながち間違ってはいなかったことになる。
―セックスは子作りのためだけにあるものじゃないだろう。
 彼は不妊治療をしている間も、よく言っていた。そのたびに、紗英子は彼に反発し、夫婦仲はどんどん険悪になっていった。漸く辛い治療から解放され、直輝は直輝でホッとしているのだろう。彼の言うように、夫婦のセックスとは本来、互いの信頼と愛情を深め、確かめ合うコミニュケーションなのかもしれない。
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