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Tears【涙】~神様のくれた赤ん坊~
第6章 ♠RoundⅣ(踏み出した瞬間)♠
結婚して何年も経つのに、いまだに自分がこんなにも夫を愛しているのが信じられない。が、果たして彼も自分と同じ気持ちなのかは自信がない。今、この場で訊ねようとしても、笑われそうで勇気が出せない。
昨夜は幾度も直輝に抱かれ、彼はその度に紗英子の耳許で〝好きだ、愛している〟と囁いた。しかし、情事の最中の〝愛している〟などという科白を鵜呑みするほど愚かなことはない。男にしろ女にしろ快楽に身体を支配され、我を忘れている最中には、どのような甘い科白だとて口にするものだ。
「あなた、少し話があるの」
別に今夜、あの話をしなければいけないわけではなかった。だが、こうと決めたのなら、早い方が良いのも確かだ。引き延ばせば引き延ばすほど、心は鈍り言いにくくなるだろうことは判っていた。
「うん? 何だ」
新聞に視線を向けたまま返事が返ってきた。
昨夜は幾度も直輝に抱かれ、彼はその度に紗英子の耳許で〝好きだ、愛している〟と囁いた。しかし、情事の最中の〝愛している〟などという科白を鵜呑みするほど愚かなことはない。男にしろ女にしろ快楽に身体を支配され、我を忘れている最中には、どのような甘い科白だとて口にするものだ。
「あなた、少し話があるの」
別に今夜、あの話をしなければいけないわけではなかった。だが、こうと決めたのなら、早い方が良いのも確かだ。引き延ばせば引き延ばすほど、心は鈍り言いにくくなるだろうことは判っていた。
「うん? 何だ」
新聞に視線を向けたまま返事が返ってきた。