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Tears【涙】~神様のくれた赤ん坊~
第6章 ♠RoundⅣ(踏み出した瞬間)♠
「で、何なんだ、その大切な話ってのは」
「赤ちゃんの話」
これは、かなりの不意打ちだったらしい。ここまで愕いた夫の顔を紗英子は初めて目の当たりにした。他のことが話題であれば、きっと笑っていただろう。
しかし、今夜は笑うどころではなかった。
「赤ん坊? 紗英子、お前、一体、何を言ってるんだ? お前は手術をして―」
流石に最後までは言えなかったのだろう。直輝は中途半端に口をつぐみ、紗英子の正気を疑うかのように見つめてきた。
「それとも、施設から身寄りのない子どもでも引き取ろうってのか?」
直輝はどこか所在なげに周囲を見回し、それから苛立ったように煙草を取り出して火をつけた。
「そりゃア、親のない引き取り手のない赤ん坊を育てるってのも悪くはないと思う。だが、他人の子を育てるのは思ってる以上に難しいぞ? 犬や猫の子を飼うのとは訳が違う。その子が一人前になるまで一生涯、責任をもって養育しなければならないんだ。紗英子がどうしても育ててみたいというのなら、敢えて反対まではしないけど、もう少し気持ちが落ち着いてから、よく考えて判断しても悪くはないんじゃないのか?」
「赤ちゃんの話」
これは、かなりの不意打ちだったらしい。ここまで愕いた夫の顔を紗英子は初めて目の当たりにした。他のことが話題であれば、きっと笑っていただろう。
しかし、今夜は笑うどころではなかった。
「赤ん坊? 紗英子、お前、一体、何を言ってるんだ? お前は手術をして―」
流石に最後までは言えなかったのだろう。直輝は中途半端に口をつぐみ、紗英子の正気を疑うかのように見つめてきた。
「それとも、施設から身寄りのない子どもでも引き取ろうってのか?」
直輝はどこか所在なげに周囲を見回し、それから苛立ったように煙草を取り出して火をつけた。
「そりゃア、親のない引き取り手のない赤ん坊を育てるってのも悪くはないと思う。だが、他人の子を育てるのは思ってる以上に難しいぞ? 犬や猫の子を飼うのとは訳が違う。その子が一人前になるまで一生涯、責任をもって養育しなければならないんだ。紗英子がどうしても育ててみたいというのなら、敢えて反対まではしないけど、もう少し気持ちが落ち着いてから、よく考えて判断しても悪くはないんじゃないのか?」