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Tears【涙】~神様のくれた赤ん坊~
第6章 ♠RoundⅣ(踏み出した瞬間)♠
「良い加減にしないか! 俺は協力はしないと言っている。何度同じことを言わせれば、気が済む?」
「何度でも同じ科白を繰り返すわ。あなたが良いと言うまではね」
 地獄の底を這うような不穏な声を出されても、紗英子は平然と夫の言葉に耳を傾けている。
「お願いだから、直輝さん」
 直輝の足許に縋り付くのと、紗英子の身体が後方に飛んだのは同時だった。
「良い加減にしろッ。止せと言ってるのに、まだしつこく繰り返すつもりか?」
 決死の覚悟で脚に縋り付いた紗英子を、直輝が振り払ったのだ。直輝本人にはそのつもりはなくても、結果としては紗英子を蹴り上げたのと同じことになった。
 小柄な紗英子は後方に飛び、腰をしたたか打った。一瞬、痛みを感じたものの、紗英子は立ち上がり、キッチンへと走った。
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