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Tears【涙】~神様のくれた赤ん坊~
第8章 ♦RoundⅤ(覚醒)
もちろん、この男とならば人生をやり直しても良いと心から思えるほどの出逢いがあれば、また結婚する気にもなるだろうが。
ときめきも愛情もけして不変ではない。そのことを身をもって知る有喜菜は、たとえ心から愛する男と出逢ったとしても、再び結婚という枠に入るだけの勇気を持てるか自信はなかった。
有喜菜が望むのは後腐れのない、大人の自由な関係だ。ゆえに、基本的には生涯、独身を貫く覚悟でいる。つまり、今、流行の言葉でいえば〝おひとりさま〟の老後を迎えることになる。であれば、蓄えは少しでも多い方が良いに違いない。
三十六歳で晩年のことまで考えているといえば、他人は笑うだろう。しかし、そんな呑気なことが言えるのは守ってくれる夫がいて、老後を託せる我が子がいる幸せな女たちだけだ。有喜菜の場合は夫も子どももいないのだから、たとえ誰に何と言われようと、老後に安心して暮らせるだけの貯金は必要なのである。
ときめきも愛情もけして不変ではない。そのことを身をもって知る有喜菜は、たとえ心から愛する男と出逢ったとしても、再び結婚という枠に入るだけの勇気を持てるか自信はなかった。
有喜菜が望むのは後腐れのない、大人の自由な関係だ。ゆえに、基本的には生涯、独身を貫く覚悟でいる。つまり、今、流行の言葉でいえば〝おひとりさま〟の老後を迎えることになる。であれば、蓄えは少しでも多い方が良いに違いない。
三十六歳で晩年のことまで考えているといえば、他人は笑うだろう。しかし、そんな呑気なことが言えるのは守ってくれる夫がいて、老後を託せる我が子がいる幸せな女たちだけだ。有喜菜の場合は夫も子どももいないのだから、たとえ誰に何と言われようと、老後に安心して暮らせるだけの貯金は必要なのである。