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Tears【涙】~神様のくれた赤ん坊~
第9章 ♦RoundⅥ(天使の舞い降りた日)♦
「ありがとう、有喜菜」
ダイヤモンドのように輝く湖面を見ている中に、紗英子はまたしても涙が込み上げてきた。何と言っても、いちばんの功労者は有喜菜なのだ。まずはお礼を言わなくてはと思い、口にした。
「あなたのお陰よ。これで私と直輝さんも漸く自分の子どもが持てるわ」
紗英子は傍らにひっそりと立つ有喜菜を見た。相変わらずのスレンダーで、当然ながら、まだお腹は少しも膨らんではいない。だが、彼女の胎内には既にひそやかに新しい生命が芽生え、育ちつつあるのだ。そして、それは有喜菜の子どもではなく、他ならぬ紗英子の、紗英子が心から愛する男、直輝の子であった。
「先生はまだ何も言わなかったけど、予定日は今年ぎりぎりくらいかしら。来年ってことはないでしょうね」
早くも赤ん坊が生まれる日にまで想いを馳せ、浮き浮きとした調子で言う。有喜菜は相槌を打つでもなく、何の感情も感じさせない瞳を湖面に向けていた。
ダイヤモンドのように輝く湖面を見ている中に、紗英子はまたしても涙が込み上げてきた。何と言っても、いちばんの功労者は有喜菜なのだ。まずはお礼を言わなくてはと思い、口にした。
「あなたのお陰よ。これで私と直輝さんも漸く自分の子どもが持てるわ」
紗英子は傍らにひっそりと立つ有喜菜を見た。相変わらずのスレンダーで、当然ながら、まだお腹は少しも膨らんではいない。だが、彼女の胎内には既にひそやかに新しい生命が芽生え、育ちつつあるのだ。そして、それは有喜菜の子どもではなく、他ならぬ紗英子の、紗英子が心から愛する男、直輝の子であった。
「先生はまだ何も言わなかったけど、予定日は今年ぎりぎりくらいかしら。来年ってことはないでしょうね」
早くも赤ん坊が生まれる日にまで想いを馳せ、浮き浮きとした調子で言う。有喜菜は相槌を打つでもなく、何の感情も感じさせない瞳を湖面に向けていた。