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Tears【涙】~神様のくれた赤ん坊~
第9章 ♦RoundⅥ(天使の舞い降りた日)♦
 紗英子はそれからも煩くさえずっていたが、有喜菜はもう何も耳には入らなかった。
 直輝が、直輝が紗英子の告白を受け容れた。その重い事実だけが有喜菜の心を支配し、打ちのめした。
―そう、良かったじゃない。
 努めて狼狽えないように、余裕を滲ませて祝福するのが精一杯。でも、自宅に帰ってからは二階の自室に駆け上がり、ベッドに打ち伏して泣いた。
 どうして、もっと早くに告白しなかったんだろう? 自分をどれだけ責めてみたところで、時は既に遅かった。有喜菜の性格からして、既に纏まってしまった直輝と紗英子の間に割り込もうとまでするつもりはなかった。
 だが、妙だとも思った。紗英子はこれまで一度も、直輝のことを好きだと話したこともなく、それらしい態度を示したこともなかった。小学校のときには、クラスの初恋の男の子について、それはもう煩いくらいに毎日、聞かされたはずなのに。
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