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Tears【涙】~神様のくれた赤ん坊~
第9章 ♦RoundⅥ(天使の舞い降りた日)♦
もしかしたら、あの頃、紗英子は紗英子なりに、有喜菜の存在を牽制していたのかもしれない。そのことに疎い有喜菜が気づかなかっただけで、紗英子は有喜菜を警戒し、将来はライバルになり得ると判断して、有喜菜には直輝が好きだという気持ちを気ぶりほども見せずに彼に近づいたのだろう。
紗英子自身にはその自覚がなかったとも考えられるが、結局、紗英子はそう取られても仕方のないことをやってのけだのだ、あのときは。
まあ、恐らくは無意識の中に―女の勘というヤツで、紗英子は何となく有喜菜を煙たく思っていたに違いない。一年のときは有喜菜と直輝が同じクラスだったから、二年になって二人が離れ逆に紗英子と直輝が同じクラスになったのがチャンスとばかりに猛アタックした、それが真実だろう。
あの時、奥手で優柔不断な紗英子のどこに、男子に猛アタックするほどの勇気と決断力があったのかと、有喜菜はただただ信じられない想いであった。
紗英子自身にはその自覚がなかったとも考えられるが、結局、紗英子はそう取られても仕方のないことをやってのけだのだ、あのときは。
まあ、恐らくは無意識の中に―女の勘というヤツで、紗英子は何となく有喜菜を煙たく思っていたに違いない。一年のときは有喜菜と直輝が同じクラスだったから、二年になって二人が離れ逆に紗英子と直輝が同じクラスになったのがチャンスとばかりに猛アタックした、それが真実だろう。
あの時、奥手で優柔不断な紗英子のどこに、男子に猛アタックするほどの勇気と決断力があったのかと、有喜菜はただただ信じられない想いであった。