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Tears【涙】~神様のくれた赤ん坊~
第10章 ♦RoundⅦ(再会)♦
 よく子宮がなくなれば、女ではないなどと馬鹿げたことを言う輩がいるが、直輝は間違っても、紗英子をそんな風に見たことはない。子宮があろうがなかろうが、紗英子は妻であり、直輝にとっては生涯を共に歩くと決めた伴侶であった。今更、子どもができないことで彼女を責めるつもりも、離婚するつもりもなかった。
 むしろ、子宮を失ってしまった妻を側で支えてやりたいと願っていたほどだったのだ。
 だから、直輝の心が紗英子に対して醒めてしまったというのは、断じて紗英子の身体の変化には関係ないのだ。
 きっかけはクリスマスの当日、紗英子が代理母出産をしたいなどと言い出したことに違いない。あんな馬鹿げた話を紗英子が持ち出さなければ、自分たち夫婦の仲がここまでこじれることはなかった。
 直輝は最後まで何とか紗英子を翻意させようとした。直輝は熱心な信徒というわけではないが、いちおうクリスチャンだ。実家は代々、仏教を信仰している家で、別段それに逆らうつもりもなく、ただ何となく信仰を寄せているという程度のものである。
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