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Tears【涙】~神様のくれた赤ん坊~
第10章 ♦RoundⅦ(再会)♦
 キリスト教で代理母を禁じているわけではないが、もしイエスがこの世におわせば、やはり妊娠・出産というそもそもは自然の領域である部分に人間の手が加わることは間違いだと言うに違いない。
 もちろん、直輝だとて人間である。人並みに子どもを欲しいと願う気持ちはあるし、我が子をこの腕に抱いてみたいとも思う。だが、妻以外の女の腹だけを借りて―他人の身体を道具として利用してまで、我が子を得たいとは思わない。
 その点が紗英子とは決定的に考えが異なるのである。しかも、紗英子は子宮を喪ったことで、怖いくらいに思いつめている。もう進むべき道がないと思い込み、何が何でも子どもを得なければという半ば強迫観念のようなものに取り憑かれているように見えた。
 これまで不妊治療には気が進まなかったものの、直輝は何とか協力してきた。紗英子にはこの言い方が気に入らなかったようではあるが、まさしく〝子どもを一途に欲しいと願う妻が可哀想〟だったからだ。
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