この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
Tears【涙】~神様のくれた赤ん坊~
第10章 ♦RoundⅦ(再会)♦
結局、不幸なのは生まれてきた子どもではないか。人為的操作を施され、この世に誕生させられた小さな生命を、直輝は父親として認め慈しんでやることはできない。母親である紗英子は溺愛するではあろうが、その子を得ようとしたそもそもの出発点が間違っている。
自分たち夫婦がこの先、どうなってゆくのか実のところ、直輝自身にも判らなかった。紗英子が代理母出産を諦めてくれさえすれば、まだまだやり直しはできたはずなのに、幸か不幸か一度目の治療で代理母が妊娠したことが、自分たち夫婦を二度と寄り添えぬ関係にしてしまった。
紗英子から贈られたこの時計も実をいえば、外してしまいたい。しかし、それをしてしまえば、自分たち夫婦の仲は本当におしまいなのだと判っているから、できないでいた。
直輝は三度目の溜息を盛大につき、心もちネクタイを緩めた。
自分たち夫婦がこの先、どうなってゆくのか実のところ、直輝自身にも判らなかった。紗英子が代理母出産を諦めてくれさえすれば、まだまだやり直しはできたはずなのに、幸か不幸か一度目の治療で代理母が妊娠したことが、自分たち夫婦を二度と寄り添えぬ関係にしてしまった。
紗英子から贈られたこの時計も実をいえば、外してしまいたい。しかし、それをしてしまえば、自分たち夫婦の仲は本当におしまいなのだと判っているから、できないでいた。
直輝は三度目の溜息を盛大につき、心もちネクタイを緩めた。