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Tears【涙】~神様のくれた赤ん坊~
第10章 ♦RoundⅦ(再会)♦
刹那、満奈美がかすかに片目を瞑って見せた。直輝はまるでおぞましいものでも見たような気持ちで、慌てて視線を逸らす。
全っく、何なんだ、あの女。
腹立たしい気持ちになり、直輝はそのまま最上階の社員食堂にランチを取るために行った。むろん、満奈美のことなど、もう頭にはない。考えているのは、今夜、六年ぶりに再会する有喜菜のことだけだ。
だから、満奈美が去っていく自分の方を燃えるような憎悪を宿した眼で見つめていることにも気づくはずもなかった。
その夜になった。午後七時、直輝は会社近くのピアノ・バー〝CAT'S-EYE〟の扉を押した。
この店はマスターが殆ど趣味でやっているようなものである。脱サラした五十代後半のマスターは銀髪の知的な雰囲気だ。直輝は会社帰りにしばしば立ち寄り、仕事の悩みなどをよく打ち明けている。父親に対するのに近い心情を抱いていた。
全っく、何なんだ、あの女。
腹立たしい気持ちになり、直輝はそのまま最上階の社員食堂にランチを取るために行った。むろん、満奈美のことなど、もう頭にはない。考えているのは、今夜、六年ぶりに再会する有喜菜のことだけだ。
だから、満奈美が去っていく自分の方を燃えるような憎悪を宿した眼で見つめていることにも気づくはずもなかった。
その夜になった。午後七時、直輝は会社近くのピアノ・バー〝CAT'S-EYE〟の扉を押した。
この店はマスターが殆ど趣味でやっているようなものである。脱サラした五十代後半のマスターは銀髪の知的な雰囲気だ。直輝は会社帰りにしばしば立ち寄り、仕事の悩みなどをよく打ち明けている。父親に対するのに近い心情を抱いていた。