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Tears【涙】~神様のくれた赤ん坊~
第10章 ♦RoundⅦ(再会)♦
「演奏したから、汗もかいたし、喉も渇いちゃった」
 舌をちろりと覗かせ、肩を竦めて見せる。
 妖艶な外見には似合わないその邪気のない仕種は、まさに十三歳の有喜菜そのものであった。ぐっと烈しい感情が突き上げてきて、直輝は言った。
「有喜菜、俺はあの頃、君を」
「その話はもう止めて。今更、過ぎたことよ」
 マスターが氷をグラスに入れる音だけが静けさの中に鋭く響き渡った。渡されたグラスごと、有喜菜は見事な飲みっぷりでカンパリソーダをひと息に煽った。
 白い喉を仰け反らせるその姿に、直輝は身体の芯が熱くなる。有喜菜の豊満な肢体をベッドに組み敷けば、こんな風に白い喉をのけぞらせるのだろうか。その時、彼女はどんな声で啼くのだろうか。
 直輝はハッと我に返った。
 馬鹿な、有喜菜はガキの頃からの友達だぞ? その友達に対して、俺は何を考えてるんだ?
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