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Tears【涙】~神様のくれた赤ん坊~
第10章 ♦RoundⅦ(再会)♦
 有喜菜も三十六歳の女なのだ。他人には言えない交友関係もあるだろうし、当然、その中には深い仲の男もいるだろう。むしろ、これだけの良い女なのだから、男が放っておくはずがない。
 しかし、何故か直輝は面白くはなかった。有喜菜が顔も見たことのない男に抱かれているシーンを想像しただけで、怒りで眼裏が紅く染まりそうだ。
 が、自分は有喜菜の友達というだけにすぎず、彼女に対してそんなことを考える権利も自由もないはずだ。
 直輝が想いに囚われていると、有喜菜は思いも掛けないことを言った。
「お腹の子どもの父親が誰だか知ったら、あなたも愕くわよ」
「それは、どういう意味なんだ? お腹の子の父親を俺が知っているということか?」
 直輝は勢い込んで言い、途中でハッとして努めて冷静な自分を保とうとした。
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