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Tears【涙】~神様のくれた赤ん坊~
第10章 ♦RoundⅦ(再会)♦
 もう、おしまいだと思った。妻との間が既に修復不可能だとの自覚は薄々あったものの、ここまで心が冷えるとは思わなかった。
 今夜、これからマンションに帰って、自分は一体、どんな顔で妻を見れば良い? 何もなかったような顔で紗英子と話ができるだろうか。
「だから、あなたも紗英をこのことで責めたりしないで。紗英は、直輝に代理母については一切話してないはずよ。だったら、最後まで知らないふりを通してね」
 有喜菜の静かな声にいざなわれるように、直輝は顔を上げた。
「君はそれで良いのか?」
「構わないわ」
 有喜菜の微笑はやわらかでいながら、どこか果てのない哀しみを湛えているようにも見えた。それは昔、直輝が見た美術の教科書に載っていたモナリザを彷彿とさせる。
 直輝は元々、真っすぐな気性だ。彼は義憤に駆られながら言った。
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