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Tears【涙】~神様のくれた赤ん坊~
第10章 ♦RoundⅦ(再会)♦
「済まない。本当に、何をどう言って謝ったら良いか判らないよ」
結局、紗英子は有喜菜の身体を利用したにすぎない。医療が発達した現代でも、年に数人はお産で生命を落とす不運な人もいるのだ。その生命賭けともいえる出産を自分の身勝手で大切な存在であるはずの親友に頼むなんて、直輝には信じられないことだ。
紗英子には良心や優しさといったものはないのだろうか。有喜菜の手前、夫である直輝はただ恥じ入るしかない。
「それは良いの。別に紗英は私に強制したわけでもないし、それなりの報酬を提示して、頭を下げて頼んできたんだし。それを引き受けたのは私よ。だから、別にあなたや紗英をどうこう言うつもりはないの」
「報酬―」
直輝は情けなさと怒りで泣きたい気分だった。
俺の、俺が信じていた妻であったはずの女は、長年の親友に札束を積み上げて代理母になれと要求したのか。
結局、紗英子は有喜菜の身体を利用したにすぎない。医療が発達した現代でも、年に数人はお産で生命を落とす不運な人もいるのだ。その生命賭けともいえる出産を自分の身勝手で大切な存在であるはずの親友に頼むなんて、直輝には信じられないことだ。
紗英子には良心や優しさといったものはないのだろうか。有喜菜の手前、夫である直輝はただ恥じ入るしかない。
「それは良いの。別に紗英は私に強制したわけでもないし、それなりの報酬を提示して、頭を下げて頼んできたんだし。それを引き受けたのは私よ。だから、別にあなたや紗英をどうこう言うつもりはないの」
「報酬―」
直輝は情けなさと怒りで泣きたい気分だった。
俺の、俺が信じていた妻であったはずの女は、長年の親友に札束を積み上げて代理母になれと要求したのか。