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Tears【涙】~神様のくれた赤ん坊~
第11章 ♦RoundⅧ(溺れる身体、心~罠~)♦
♦RoundⅧ(溺れる身体、心~罠~)♦
再会をきっかけに、有喜菜と直輝は頻繁に逢うようになった。むろん、二人の仲が深まってゆくことを、紗英子が知るはずはない。
だが、二人が当然、行く着くべきところに行くのには時間を要した。というより、有喜菜の方がわざと直輝を焦らしたのである。
男なんて、所詮、女を手に入れてしまえばそれでおしまい。直輝は誠実な男だけれども、そういう男特有の所有本能があっても不思議ではない。だから、できるだけ、そのときは引き延ばしておいた方が良い。
有喜菜は恥じらいを装いながら、冷静に男の様子を観察し続けた。どうせ手に入れることのできる果実でも、完全に熟すまで待てば、手にしたときの歓びも味わいもより甘美だろう。
逆に、あまりに熟すのを待ちすぎて時機を逸してしまえば、それはそれで得たときの価値を失わせてしまう。有喜菜は慎重に間合いを計り、直輝を時に妖艶な微笑で、時に無邪気な少女のように、必要とあれば涙すら浮かべて魅了した。