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Tears【涙】~神様のくれた赤ん坊~
第11章 ♦RoundⅧ(溺れる身体、心~罠~)♦
冗談めかして微笑みかけ、逆に、かつて見たことがないほど真摯なまなざしを向けられた。
「なら、遅くはないのか? 俺たちはまだ、あの瞬間―二十三年前に戻って、やり直せるのか?」
今度は有喜菜が沈黙する番だった。
「それは、あなた次第よ」
口にはしなかったが、〝紗英を棄てられるの?〟という言葉を飲み込む。
直輝が昔を懐かしむ口調で言った。
「あの頃、俺は本当に君に惚れていた」
今、初めて耳にする心情の吐露に、有喜菜は問い返さずにはいられなかった。
「何で、紗英の告白を受け容れたの?」
「それは―」
直輝は少し逡巡を見せ、思い切ったようにひと息に言う。
「紗英子から、君には別に想う男がいると聞かされたからだ」
「なら、遅くはないのか? 俺たちはまだ、あの瞬間―二十三年前に戻って、やり直せるのか?」
今度は有喜菜が沈黙する番だった。
「それは、あなた次第よ」
口にはしなかったが、〝紗英を棄てられるの?〟という言葉を飲み込む。
直輝が昔を懐かしむ口調で言った。
「あの頃、俺は本当に君に惚れていた」
今、初めて耳にする心情の吐露に、有喜菜は問い返さずにはいられなかった。
「何で、紗英の告白を受け容れたの?」
「それは―」
直輝は少し逡巡を見せ、思い切ったようにひと息に言う。
「紗英子から、君には別に想う男がいると聞かされたからだ」