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Tears【涙】~神様のくれた赤ん坊~
第11章 ♦RoundⅧ(溺れる身体、心~罠~)♦
 だが―。そのときの直輝の涙は、実は全く別の理由から来るものであった。そのことを、有喜菜は直に思い知らされることになった。
 その日は土曜日で、直輝の仕事も休みだ。だから、健診が終わった後も、二人は病院の近くの公園をゆっくりと散策した。
 折しも晩秋の公園は秋の陽射しが穏やかに降り注ぎ、色とりどりの紅葉した樹々が立ち並んでいる。
 小さな公園には遊具らしいものは殆ど見当たらないが、片隅に鉄錆びた小さな滑り台だけがぽつねんと置き忘れられたように放置されていた。
 そういえば、この公園で遊ぶ子どもの姿を見かけたことがない。今頃の子ども事情はよく知らないけれど、保険会社の同僚たちには小中学生を持つ人もたくさんいて、今の子どもはやれパソコンだゲームだと言って、外で遊ぼうとはしないという。
 ふと、有喜菜はこの滑り台で遊ぶ元気な子どもの姿を想像してみた。その手は知らぬ中に、膨らんだお腹を撫でていた。
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