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Tears【涙】~神様のくれた赤ん坊~
第11章 ♦RoundⅧ(溺れる身体、心~罠~)♦
 もし、この子が自分の血を分けた子どもであったら。自分は何としてでも直輝と子どもを紗英子から奪い取ろうとするだろう。
 だが、この子は私の子どもではない。やはり、紗英子にちゃんと返すべきなのだ。
 と、ジャンパースカートの上から、赤ん坊が動いているのがよく判った。近頃ではとみに胎動が烈しくなり、時には痛みを感じるほど腹壁を強く蹴ることもある。
 もしかしたら、胎児は男の子なのかもしれない。
「男かな、女かな」
 ふと傍らを歩く直輝が呟き、有喜菜の膨らんだ腹に手を当ててきた。妊娠九ヶ月めに入ったときから、しばらく二人はホテルに行くのを止めようと話し合っていた。出産が終わるまでは、こうして時折逢っても、食事したりショッピングしたりと、ごく普通のデートを愉しもうということになっている。
「性別は訊かないことにしているのよ」
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