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Tears【涙】~神様のくれた赤ん坊~
第4章 ♠RoundⅡ(哀しみという名の現実)♠
「待った? ごめんね、支度に手間取っちゃて」
 そう言いながらも、紗英子は有喜菜の全身に素早く視線を走らせる。こういう場合、たとえ長年の気心の知れた友人でも、女同士の眼は容赦がない。たとえ表情や口には出さなくても、心の中では何を考えているか知れたものではない。
 そして、この瞬間、紗英子は〝負けた〟と思った。
 元々、有喜菜はモデル張りのプロポーションをしている。八頭身の恵まれたスタイルに、派手な顔立ちは人眼を引くには十分すぎる。
 ただ一つ難をいえば、学生時代は色気とか女っぽいという言葉とは全く無縁だったことだろう。いつもショートヘアにテニス部のジャージ姿で、ちょっと見には男の子と間違えそうな雰囲気だった。また実際に、書店とか行って店員さんに本のありかなど訊ねると、
―ボクねぇ―、悪いんだけど、その本は今、在庫がないんだよ。
 と、男子学生と間違えられることはしょっちゅうだったといつも笑い話のように打ち明けていたものだ。
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