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Tears【涙】~神様のくれた赤ん坊~
第12章 ♦予知夢~黒い霧~♦
 あの時、紗英子は思ったものだ。有喜菜なんて、大嫌い。直輝が有喜菜を好きなのかどうかまでは判らなかったけれど、何か特別な感情を抱いているのは間違いない。
 さもなければ、有喜菜が他の男の子を好きらしい―と聞いただけで、血相変えて飛んでいくはずはない。
 その後、直輝がどうしたのかまでは知らない。でも、その翌日、焦りと妬心をひた隠し、紗英子は直輝に告白した。
 とはいえ、よもや直輝がそれを承諾するとは自分でも考えていなかった。サッカー部のエースであり、勉強も常にトップクラス、更にルックスも人気モデルに引けを取らない直輝。そんな彼に憧れ想いを寄せる女子生徒は圧倒的に多く、中には三年の美人の先輩が告白したなんていう噂まで立ったほどだ。
 それに引きかえ、紗英子は成績こそ、そこそこ上位にいつも名を連ねているものの、容色も何もかもがすべて平凡中の平凡だった。そんな垢抜けない自分が学校中の女子の憧れである直輝の心を射止めるなんて、できるはずがないと諦めていたのだ。
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