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Tears【涙】~神様のくれた赤ん坊~
第12章 ♦予知夢~黒い霧~♦
 ああ、有喜菜。お願い、死なないで。
 その時、紗英子は初めて有喜菜の無事を願った。生まれてくる子どもと、代理出産を依頼した自分たちを生命賭けで守ろうとしてくれている彼女を思い、涙したのだった。
 夫が何故、有喜菜が代理母であることを知っていたのか? それについての疑問と衝撃は依然としてあったけれど、今はもう、それどころではなかった。
 今はただ、生命を賭けて新しい生命をこの世に送り出そうとしている友の許へ駆けつけたかった。

 S市のエンジェル・クリニックに到着した時、既に夜は明けていた。始発を待って乗り込み、S駅からはタクシーを飛ばしても、時間は八時を回っていた。このときはもう有喜菜の出産は終わっていた。
 未明にドクター・ヘリでN町の総合病院からS市のクリニックに搬送された有喜菜は直ちに帝王切開の手術を受けた。
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