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Tears【涙】~神様のくれた赤ん坊~
第4章 ♠RoundⅡ(哀しみという名の現実)♠
 有喜菜の他には友達らしい友達もいなかった紗英子とは大違いで、有喜菜の周囲には男女関係なく常に人が集まっていた。俗に言うカリスマ性があるというのだろうか。男子にでも平気で溜め口で喋る有喜菜を男子生徒たちもまた女子扱いせず、男の子のように接していた記憶がある。
 そんな有喜菜が納得できる理由もなしに見舞いにこなかったはずはない。彼女の言うように本当に忙しかったのだろうし、たとえそうではないにせよ、気を遣ったのだろう。そういうところは、直輝と有喜菜はよく似ている。他人への気配りができるというのか。それは両親が年老いてからやっと恵まれた一人っ子であった紗英子にはない点だ。
 紗英子はどうしても何でも自分本位に考えてしまう。だから、直輝にも与えられるばかりで、自分から与えようとはしなかった。それは何も記念日の贈り物のことだけを言っているのではない。この十三年間、あらゆるもの―品物だけでなく優しさや愛情すらも、紗英子はもしかしたら直輝から与えられっ放しだったのではないか。
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