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Tears【涙】~神様のくれた赤ん坊~
第4章 ♠RoundⅡ(哀しみという名の現実)♠
「いえ、うちは―」
 子どもがいないんですと言おうとして、面倒臭くなって止めた。
 ギフト用に包んで貰い、店員の〝ありがとうございます〟という愛想の良い声に見送られて店を出た。
 店を出て地下街の出口に向かって歩きかけたときのことである。
 向こうから〝あっ〟と小さな声が聞こえ、紗英子は眼を見開いた。
「おばちゃん!」
 見れば、やってくるのは家族連れらしい。五歳くらいの男の子と赤ん坊を連れた、まだ若い両親だ。紗英子には、その男の子の顔に見憶えがあった。ついこの間まで入院していたクリニックで見かけたあの子―〝お腹に赤ちゃんがいるの?〟と紗英子に問いかけ、母親に叱られていた子どもである。
 確か、拓也といったか。
 拓也もまた紗英子を憶えていたらしく、母親の手を振りほどいて、ぴょんぴょん跳ねるように駆けてきた。
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