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Tears【涙】~神様のくれた赤ん坊~
第4章 ♠RoundⅡ(哀しみという名の現実)♠
 代わりに、ややあって耳に流れ込んできたのは、夫のものとは思えない冷淡な声音だった。
「勘違いするな。俺は何もお前じゃなければいけないほど飢えてもないし、獣でもない。一夜の欲望を晴らせる場所なんて幾らでもあるさ」
 つまりは、何が何でも紗英子を抱きたいとまでは思っていないということだ。夫にしてみれば、セックスが和解、或いは妻の冷えささくれだった心を癒すと考えていたのかもしれないが、それこそ紗英子に言わせれば、大いなる勘違いも良いところだ。
 紗英子にとって、セックスはあくまでも子どもを持つための手段にすぎず、子宮を失い子どもを授かるという夢を永遠に手放した瞬間、最早、何の意味も価値もない浅ましいだけの行為になってしまった。
 つまりは、夫に対して、それだけの感情しか残ってはいないということでもある。もし仮に紗英子がまだ直輝を愛しているのであれば、直輝の言うことも素直に共感できたろう。
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