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100万本の赤い薔薇
第5章 再会
茉莉子は躊躇いもなく電話に出た。
これまで人前やレストランなどで携帯電話を取ることなど、
することはなかった。

「もしもし、拓人さん?」

と呼び掛けると二度と聴きたくなかった義理の姉の冷たい声がした。

「この携帯はどういうことかしら?
家を出た女のくせに、
二度とコンタクトを取ろうとしないで頂戴」

茉莉子は携帯電話を握り締めたまま動けず、
涙を流して唇を噛み締めていた。
唇の端からうっすら血が滲むのを見て、
慌てて長谷川は電話を奪って耳を澄ませたが、
既に電話は切れていた。

茉莉子は蝋人形のように無表情で、
身体まで冷たくなってしまっていた。

長谷川は会計をテーブルで済ますと、
茉莉子の荷物を結依に預けて、
抱き抱えるようにエントランスに向かった。

ホテルの部屋を取るより、
一刻も早く自分の部屋に連れ帰って休ませることが一番良いと考え、
タクシーに乗せ、住所を告げた。

茉莉子を結依と2人、挟むようにして座り、
長谷川は腕を回して自分にもたれるように抱き抱え、
結依は心配そうに茉莉子の手を握り締めた。


気付くと茉莉子は眠っていた。
その方が辛さが和らぐと思うと、
痛々しくて長谷川は胸が苦しくなった。

タクシーを降りると茉莉子を抱き上げ、
結依にドアの開閉を任せながら茉莉子の部屋まで連れ帰り、
ベッドに茉莉子をそっと降ろした。

モカも心配そうに茉莉子を覗き込んでいる。

キチンと結んであるラップドレスのリボンを緩め、
髪を纏めてあるらしき飾り櫛を取ってからブランケットをそっと掛けた。


長谷川と結依は、茉莉子のことが心配で、
1人には出来ないという結論に達したので、
リビングで静かに待つことにした。


結依はマシンで長谷川にコーヒーを入れた。
自分用にはミルクをたっぷり入れたカフェオレにした。


「電話、なんて言われたのかな?」

「女性の声のように聴こえたが」

「結依はどうして、拓人くんのことを知ったんだ?」

「えっとね、留守番してる時に、
奥のお部屋を見てしまったの。
そしたら男の子の写真がたくさんあってね。
その後に、紙袋を渡して欲しいって言われたから、
何となくそうかなって」

「そうか」


とにかく、茉莉子が目を覚ますのを待つしかない。
2人はそう思った。



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