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100万本の赤い薔薇
第6章 嵐の夜
翌朝、直接社長に電話を入れ、急なことを詫びながらお休みを頂きたいことを伝えた。

社長は何かを察したようだった。
父親のような優しい口調で、
「しっかりやりなさい」とだけ言った。


林にも早朝からの電話を詫びながら、
手早く今日の業務連絡をした。

「茉莉子さんの休み、珍しいですね」と言いながらも、
深く踏み込まないことに感謝した。

そして、9時きっかりに弁護士事務所に電話をすると、
受付の女性がすぐに「大先生」に繋いでくれた。


「茉莉子ちゃん、久し振りだな。
真人から聞いたよ。
今日は午前中なら事務所に居るから2人でいらっしゃい。
昼飯も一緒に取ろう」と穏やかな声で言ってくれた。

お礼を言って、身支度を整えてタクシーに乗り込んだ。

弁護士事務所では、真人の父親で所長でもある、
でも茉莉子にとっては幼馴染の父親でもある懐かしい顔が待っていた。

会議室ではなく、質素だが落ち着く書斎に通された。


「拓人くん、大きくなったね。
写真でしか見てなかったが」と、
孫を見るような優しい目で拓人を見る。

そして、茉莉子にも優しい眼差しを送り、
「さて、先に話を伺って方針を決めましょう」と落ち着いた声で話し始めた。

先に拓人が口火を切った。

「もう、あの忌まわしい家には戻りたくない。
母と暮らしたいので、必要な手続きをしてください」

「忌まわしい?」

「弁護士先生も知ってるんでしょ?
父親とその実の姉とのこと。
気持ち悪くてとても一緒には居られない。
それに…小さい時から、あのオバさんには、
叩かれたり罵倒されてた。
それって虐待ですよね?
診断書とかの証拠は残してないけど、
手帳に簡単なメモは書いてあるし、
お手伝いさんの証言も取れると思う」
と、きっぱりと話した。

「虐待って…?」
茉莉子は目に涙を浮かべる。

「お母様のことを口にしたら、
お尻とか背中とか、外から見えない処を乗馬用の鞭で殴られたよ。
お父様は、止めてはくれなかった。
後から、すまないと言って治療はしてくれたけどね。
お父様がお母様のことを口にすることもあったよ。
その時は鬼のような顔で、
あのオバさん、お父様を屋敷の奥に連れて行って、
鞭の音がしてたよ。
それだけじゃない声とかも」

佐々木弁護士は、拓人の話を止めた。
茉莉子が白い顔をして震えていたのが耐えられなかったからだ。
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