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100万本の赤い薔薇
第8章 新しい息吹き
穏やかな日が続いた。

茉莉子と結依の誕生日が近かったので、賑やかに祝った。

また、ハネムーンという訳ではないが、
2人で休みを合わせて短い上海旅行にも出掛けた。

「上海蟹を食べにいらっしゃい」と言っていた顧客に連絡を取ると、
プライベートで喜んで!と車も出して貰い、
郊外の湖でつがいの蟹を堪能した。

器用に食べやすく剥いてくれたのは男性陣で、
顧客の奥様は涼しい顔で、
「それは男性の仕事ですから」と笑っていた。

何度も「こんな美しい奥様を射止めるとは幸せ者だ」と口にする顧客と幸せそうに笑う長谷川を見ながらも、茉莉子には少しだけ心が沈む瞬間があった。


そう。
生理が遅れていたのだった。
いつも比較的正確だったのに…

上海で過ごしていた頃には、
何度か長谷川と愛し合うようになって、身体がびっくりしているのなと思った。
そういうこと自体から縁遠かったからだ。

でも、更に4週間以上経っても兆候がなく、
むしろ、ちょっとした匂いに反応して吐き気を感じて、
「もしかして?」と思い、震えた。


長谷川は、元妻の陽子に強要されて、
手術をしていると聞いていた。

としたら…?

あの時は、帰宅してすぐにシャワーの水圧を当てながら、
確かに中には何も出されていないと思ったが、
そうではなかったのか?

茉莉子は絶望的な気持ちで、検査薬を買った。

結果は陽性だった。

15年前のことを思い出して倒れそうになった。

あの時も、意識を失ったまま妊娠していた。
今回も?

長谷川に対して何と言えば良いのか?
でも、授かった命を摘むという選択肢はなかった。


長谷川とはもう、一緒には居られなくなるということを覚悟して、
左手の薬指から美しい指輪をそっと外した。

照れながらも一緒に選んでくれた指輪を、
赤い箱に収めて、ベッドの横の小テーブルに置いてベッドに腰を降ろした。


そして、拓人と結依にも何と言えば良いのかも判らないまま、
とにかく長谷川に話をと立ち上がった瞬間に、
茉莉子は下腹部に激しい痛みを感じて、そのまま倒れてしまった。

その音を聞いて、
長谷川が寝室に慌てて駆け込んだ。

そして、
「結依!救急車呼んで!
茉莉子の様子がおかしい!!」と叫んだ。
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