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100万本の赤い薔薇
第9章 旅立ちの準備
金曜日になった。
この日は、ちょっと仕事で日帰り出張になったと言って、
長谷川は2人に茉莉子のことを頼んで朝、家を出た。
順調に快復してきた茉莉子は、翌日の土曜日には退院出来るようなので、どうしても今日、カタをつけようと長谷川は考えていた。
午前中になんとか仕事を片付けて、新幹線に飛び乗った。
途中、携帯に電話を入れたが繋がらなかったので、
ひとまず、新大阪から私鉄に乗り換えて、
健太の実家を目指した。
「いらっしゃいませ」と声を掛けた女性は、
年齢こそかなり高いようで痩せてはいたが、
茉莉子に雰囲気が非常に似ていたので驚いた。
ひとまず、瓶ビールと何かお勧めのものを…と頼むと、
心の籠った優しい味の小皿が並んだ。
「東京からですか?」と訊かれたので、
思い切って、健太に会いに来たと告げた。
「ああ、携帯電話は前の会社のだったので、番号変わったんですよ。
まあ、お知らせもしないで…」と言いながら、連絡を取ってくれた。
「小1時間ほどしたら、戻るようです。
まあ、東京ではお世話になりまして…」と言われて、
この後の会話をどうしようか?と思ったが、
ちょうど常連客が連れ立って来たので、そのまま1人放置されることになった。
健太が店に入って来た。
「よく、判りましたね」
「ああ。バーのママに訊いたから」
「オカン、奥、使っても良い?」
健太の母は、にこやかに頷く。
健太は手慣れた感じで、グラスや皿をトレイに載せて、
新しいおしぼりとビール瓶を更に載せて、
奥の個室に入って行った。
そして、
「茉莉子さんのことですよね?」
と静かに言った。
長谷川は健太の目を見て言った。
「単刀直入に言うと、茉莉子は妊娠している。
父親は俺だ。
それ以外は考えられない。
でも、茉莉子は、もしかしたら?と悩んでいる。
本当のことを、教えてくれないか?」
「あの夜のことですね?」
長谷川は頷いた。
「無防備な茉莉子さんを騙すように家に連れてきて、
無理矢理犯した。
それだけです」
と健太は言った。
長谷川は拳を握り締めて唇を噛んだ。
そして、言った。
「判った。
それでも、赤ん坊は俺の子供だ。
例え、血液型が違おうが、顔が俺に似てなかろうが、
俺と茉莉子の子供だ。
それと、二度と茉莉子の前に現れないでくれ」
長谷川は泣いていた。
この日は、ちょっと仕事で日帰り出張になったと言って、
長谷川は2人に茉莉子のことを頼んで朝、家を出た。
順調に快復してきた茉莉子は、翌日の土曜日には退院出来るようなので、どうしても今日、カタをつけようと長谷川は考えていた。
午前中になんとか仕事を片付けて、新幹線に飛び乗った。
途中、携帯に電話を入れたが繋がらなかったので、
ひとまず、新大阪から私鉄に乗り換えて、
健太の実家を目指した。
「いらっしゃいませ」と声を掛けた女性は、
年齢こそかなり高いようで痩せてはいたが、
茉莉子に雰囲気が非常に似ていたので驚いた。
ひとまず、瓶ビールと何かお勧めのものを…と頼むと、
心の籠った優しい味の小皿が並んだ。
「東京からですか?」と訊かれたので、
思い切って、健太に会いに来たと告げた。
「ああ、携帯電話は前の会社のだったので、番号変わったんですよ。
まあ、お知らせもしないで…」と言いながら、連絡を取ってくれた。
「小1時間ほどしたら、戻るようです。
まあ、東京ではお世話になりまして…」と言われて、
この後の会話をどうしようか?と思ったが、
ちょうど常連客が連れ立って来たので、そのまま1人放置されることになった。
健太が店に入って来た。
「よく、判りましたね」
「ああ。バーのママに訊いたから」
「オカン、奥、使っても良い?」
健太の母は、にこやかに頷く。
健太は手慣れた感じで、グラスや皿をトレイに載せて、
新しいおしぼりとビール瓶を更に載せて、
奥の個室に入って行った。
そして、
「茉莉子さんのことですよね?」
と静かに言った。
長谷川は健太の目を見て言った。
「単刀直入に言うと、茉莉子は妊娠している。
父親は俺だ。
それ以外は考えられない。
でも、茉莉子は、もしかしたら?と悩んでいる。
本当のことを、教えてくれないか?」
「あの夜のことですね?」
長谷川は頷いた。
「無防備な茉莉子さんを騙すように家に連れてきて、
無理矢理犯した。
それだけです」
と健太は言った。
長谷川は拳を握り締めて唇を噛んだ。
そして、言った。
「判った。
それでも、赤ん坊は俺の子供だ。
例え、血液型が違おうが、顔が俺に似てなかろうが、
俺と茉莉子の子供だ。
それと、二度と茉莉子の前に現れないでくれ」
長谷川は泣いていた。