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100万本の赤い薔薇
第12章 エピローグ
茉莉子は臨月に入った。
帝王切開ということで、予定日の1週間前が手術の日と決まっていた。

その前に破水してはいけないと、家族中が過保護になっていて、
茉莉子は「みんな、大袈裟だわ」と笑っていた。


ニューヨークから茉莉子の母親とジャンも一時帰国して、
長谷川の父親も泊まることも多くなっていた。
夏休み期間だったので、長谷川と結依と拓人も家に居るので、
まさに大家族の様相だった。



こんなにみんなが集まれる機会はないからと茉莉子の提案で、
家族写真を撮りに披露宴を行ったホテルにも行き、
庭園でホタル狩りも楽しんだ。

「赤ちゃん産まれたら、また記念撮影したいわ」という茉莉子は、
ゆったりとしたワンピースに美しいピンク色のパールのピアスとネックレスを装っていた。


撮影の時は、運転手として佐々木も駆り出されていて、
家族写真だというのに、ちゃっかり一緒に写っているショットもあった。


「まあ、まこちゃんも家族みたいなもんじゃん」
と、結依が笑った。


そして、ホタルをみんなが夢中で観る中、
佐々木の手を引っ張って行って、

「まこちゃん、3人目のお嫁さん、私じゃダメなの?」と真剣な顔で言って、背伸びすると結依からそっとキスをした。


「えっ?ええ?」
と、佐々木は一瞬、混乱する。


「大人を揶揄うもんじゃないよ。
俺、オッサンだよ?」


「揶揄ってないよ。
まこちゃんのこと、好き」


「いやいやいや。
それ、何のエイプリルフールだよ。
夏だぞ。4月じゃないだろ?」


「子供だって思ってるの?」


「うん。思ってる」


「良いもん。もっと綺麗になって、
まこちゃんから土下座して付き合ってくださいって言わせるもん」

そう言うと、ぷんぷん怒りながら走って行ってしまった。


「えっ?
なんだ?
なんだったんだ?」と、佐々木は途方にくれていた。

それと同時に、
唇に結依の柔らかくて甘い口づけの感触が残っていて、
顔が綻んでしまった。


そんな様子を、拓人が見ていた。

「なんだよ。
結依のこと、僕の方が…。
でも、選ぶのは結依だからな。
やっぱり、弟としか思って貰えないんだな」

そう思いながらも、
やっぱり、自分は結依が好きだと強く思っていた。


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