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100万本の赤い薔薇
第1章 いつも見てた
少し沈黙した後、

「念の為、本人に電話番号を知らせても良いか、
確認してからでも宜しいでしょうか?」
と、佐々木真人は生真面目な声で答える。


「判りました。宜しく!」
と言って、一度電話を切る。


茉莉子の電話番号については、
こいつが知っているということが判っただけで取り敢えず良しとしよう

と、長谷川は考えた。


これで自宅でするべきことは終わった。
特に妻と顔を合わせる必要もなければ、
お互い顔を合わせたくもないだろうと考え、
自宅を後にした。


翌日の夕方、
佐々木から連絡が来た。


山岳部OB会の式典の司会を依頼したいという理由を添えたのが効いたのか、
体育会系特有の上下関係があるからなのか、
連絡先を教えることについて承諾を得たと、
携帯番号を知らされた。


「先輩、OB会はいつですか?
1月だったら帰国出来るけど、12月だと間に合わないかな。
俺、明日から出張でニューヨークなんです」

と言い、佐々木は慌ただしく電話を切った。


こいつ、茉莉子と付き合ってるんだろうか?
まあ、どうでも良いけど。
他人のことは気にせず、
欲しいものを手に入れるだけだ。


長谷川は、そう考えた。


名刺を渡したけど、
茉莉子からの電話は2日待ってもこない。

奥ゆかしい性格なんだと前向きに考えて、
月曜の夜になったら、
この電話に連絡を入れようと思った。


そして、その翌日から電話をしてみたが、
一向に声を聞くことも出来ない。


結婚披露宴で見掛けた時からずっと、
15年越しで、気になっていた茉莉子だから、
じっくりアプローチしていこうと、
長谷川は考えていた。
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