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また桜は散り過ぎて
第5章 常連の仲間入り
夜の喫茶店。
この時間帯が一番自分にあっている。
仕事を終えてまっすぐ帰ってくれば7時くらいには店のドアを開けられる。
コロコロとベルの音を鳴らせば、ゆったりとした面持ちの小西さんが、
これまたゆっくりと立ち上がって声をかけてくれる。
「いらっしゃい」
その声に軽く会釈を返しながら気に入った壁際の席を目指すと、
まるで合わせるかのように小西さんがお水を持ってやってくる。
「おかえりなさい」
テーブルに置かれたコップの音にシンクロするかのような静かな声。
場合によっては聞き取れないかもしれないその声は、かえって私の心に響いた。