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水曜日の恋人
第11章 マダムの遺言
読み終えた私は、涙が止まらなかった。


マダムは本当に、
酒井さんのことを愛していて、
私に託したかったことも良く判り、
また、私のことも気遣ってくださっていることも感じた。

言葉が出なくて、
酒井さんにしがみついて、
声を出して泣いてしまった。


酒井さんも、涙を堪えようとしながらも、
ポロポロと流れる涙を抑えることが出来ないでいた。



「私は…酒井さんとこれからも一緒に居たいです。
でも…マダムを見送る喪主は、
酒井さんが相応しいと思います」と言った。


酒井さんも静かに頷いた。



その日の夜、病院から呼び出しが来た。
再び、昏睡状態になっていると言われて、
病院に駆け付けた。


酒井さんと2人で、マダムの手を握った。
冷たい小さい手に、力はなかった。


「私、酒井さんと一緒にマダムの屋敷を守っていきますから!」と耳元で言うと、
一瞬、マダムの手が私の手を握り返した気がした。


そして、目を開けると、
「ありがとう」と言って、
そのまま目を開けることはなかった。


明け方、そのまま眠るように息を引き取った。
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