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先輩!彼氏にしてください!
第1章 彼氏にしてください!

放課後、帰り支度をしていると、麻理がラケットを背負いながらじゃあねとて手を振ってきた。
「うん、明日ねー」
そっか。今日は麻理が部活の日。
私も今日は生徒会もないし、帰って家の掃除をして、そして明日の授業の予習を…
それが終わったらずっと読みたかった本を読みたい。
廊下で男子が、ワーワーと騒いでいる。
これから遊びに行こうだの、掃除当番がどうだのと話している。
私は机の中の教科書やらをカバンに詰めているとそのうちの一人の男の子が、私の方へと向かってきた。
「安藤(あんどう)さん」
突然名前を呼ばれて顔を上げる。
彼は、同じクラスの福田(ふくだ)くん。
嫌な予感ってやつだ。
「あの……実は、どうしてもお願いがあって」
「………うん」
「美術室の掃除当番、変わってくれない?」
やっぱり、だ。
手を合わせて、「お願い!」と下げる福田くんを見ながら、私は小さく息を吐いた後、ニコリと笑った。
「いいよ」
「おぉ! まじ? さすが会長! ありがとう!」
誰かに頼られて、何かをお願いされて…
そして私はそれを断るのがとても苦手だ。
「じゃあ」と言ってそそくさと退散する福田くんは、廊下で待っていた友だちと合流している。
理由くらい聞けばよかった。
きっと、早く友だちと遊びに行きたいくらいの理由で押し付けられたんだろう。
イライラもしたけど、それは福田くんにってよりも何も聞かずに笑顔で引き受けた自分に対してだった。

